岡山理科大学生物地球学部 准教授。技術士(建設)博士(工学)。専門は土砂災害の防災対策。土砂災害で家族など大切な人を失わないために、防災関係を中心に小さな子どもたちから一般市民向けに執筆活動を展開している。
アジェクティヴ:佐藤先生が出版された、子ども向けの防災教育絵本『土砂災害のきほん』(吉備人出版)他、シリーズ3冊のブックデザインを担当させていただきました。私にとっても初めての絵本、思い入れ深い作品となりました。お声がけいただき、ありがとうございました。
佐藤さん:土砂災害の発生のしくみ、避難の大切さなどを分かりやすく紹介した教育本を作りたいと考えていました。でも自分の周りにイラストを描ける人はいないし、絵本の装丁やデザインのことも分からない。そこで、アジェクティヴさんに相談させていただいた次第です。
アジェクティヴ:なぜ「絵本」にしようと思われたのですか?
佐藤さん:以前、大人向けの本を書いた時、「一般の方々にとって、すこし難しいのではないか」といったご意見をちらほらいただきました。そこで、逆に、最もやさしいアプローチを目指したわけです。私、加減を知りませんから(笑)。その結果、子どもたちを対象にした「絵本」というアイデアに行き着きました。
以前出版された本
アジェクティヴ:原稿には聞きなれない専門用語がたくさんあり、これを「絵本」の中でどのように扱うのだろうと、正直、最初はぜんぜんイメージできませんでした。
佐藤さん:専門用語を平易な言葉に置き換えたり、ひらがなを使ったりしましたが、ニュースなどで広く使われる言葉はあえて漢字を使いました。
アジェクティヴ:テレビで使用されている言葉と、絵本の中に出てくる言葉が、子どもたちの理解の中で、自然に結びつくよう配慮されましたよね。
佐藤さん:子どもたちの防災意識を高める講演会などで絵本を活用していますが、子どもたちも理解しやすいみたいです。
アジェクティヴ:じつは、土砂災害というテーマで子ども向けの絵本を作ることに、最初は大きなプレッシャーを感じました。友人の子どもたちにラフを見てもらい、「これ、わかる?」とひとつひとつ確認し、できるだけ子どもと同じ目線で、土砂災害について学びながら進めました。
佐藤さん:子どものころ自然と身につけた知識って、大人になっても覚えていますよね。迷路やすごろくなどゲームの要素を盛り込んだのもそのねらいです。繰り返し読んでもらい、命を守るための大切な知識が定着することを目指しました。
アジェクティヴ:このたびシリーズ3冊目の出版となりました。3年かかりましたね。
佐藤さん:3冊目の『土砂災害とひなん』がついに本になり、感慨深いです。いちばん伝えたかったのは、避難について、つまり命の安全確保についてです。じつは、テレビや新聞でさえ、安全確保について間違った解釈がそのまま語られている場合があり、もどかしさを感じていました。シリーズを通して、ていねいに、正しい情報を伝えることができたと感じています。
<デザイン制作にあたって>
ていねいに正しく伝えるということにおいて、「子どもたちに親しみやすいイメージ」と「現実的であること」のバランスが重要ポイントと考える。山の崩れかた、土や石の流れかた、山水の浸み出しかたなど、子どもたちの頭の中にシーンが思い浮かぶような見せ方を、イラストを描いてくれた小西美里さん(株式会社リブレル)としっかり打ち合わせしながら進めた。
子どもたちの興味関心を高めるため、キャラクターを1巻ごとに増やしたのは佐藤先生のアイデア。
佐藤さん:砂防学の研究者として、絵本を出版したことで、さらにやるべき使命を実感するようになりました。土砂災害以外の災害対策の紹介や、「ハザードマップ」の精度の向上、それらの認知を一般の皆さまにもっと広げていくことなどです。
2018年7月、岡山県倉敷市真備町で豪雨のため大きな被害が出たことは記憶に新しいですが、皆さんの防災意識の高まっている今こそ、次なる構想をかたちにしていきたいと考えています。またよろしくお願いいたします。
アジェクティヴ:こちらこそよろしくお願いいたします! ますますお忙しくなりそうですね。
佐藤さん:
世の平和という観点から言うと、私は暇になり昼寝をするくらいがいいですね。そうなって、「もう仕事ないから辞めてもいいですよ」って言われたら、アジェクティヴさんに雇ってもらいましょう(笑)。
アジェクティヴ:・・・恐れ多いです(笑)。
このたびの自然災害により被災された皆さまに謹んでお見舞い申し上げます。 この絵本を今後の防災に役立てていただければ幸いです。 |
アジェクティヴではこんなご要望に応えます!
「絵本を作りたい(自主制作本、リトルプレスなど)」 どうぞ、お気軽にお問い合わせください。 |
岡山理科大学 准教授
佐藤丈晴さん
〈ホームページ〉
https://www.big.ous.ac.jp/~sato/
〈著書〉
『岡山の「災害」を科学する(共著)』
『命を守るための土砂災害読本』
『土砂災害のきほん』
『土石流のチカラ』
『土砂災害とひなん』
(いずれも吉備人出版)
<砂防学の研究者って?>
現地調査を重ね、「ハザードマップ」の精度を上げること。
その研究内容を学会や論文で発表すること。
ひたすら原稿を書いて、大学で学生を教えて…、けっこうやることいっぱいあるのです。
<災害についてみなさんへメッセージ>
事前に避難の準備をしておくこと!
簡単なようでいて、きちんとできている人は少ないです。しかし、初動を間違えたら、取り返しのつかないことにもなりかねません。
自分の住んでいるところの安全性を把握し、避難ルートや、適切なタイミングについて、日頃から確認しておきましょう!
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